Amazon DSPの予算はいくらが正解?観測データの限界と決め方
Amazon DSPの予算を勘や言い値で決めていませんか。観測データで言い切れる範囲と、ホールドアウトで測らないと分からない範囲を分け、予算を外さない考え方を解説します。
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DSPの予算は、観測データだけでは「黒字か」「過小か過剰か」までしか言えず、金額の確定にはホールドアウトという比較実験が要ります。
「DSPは月いくら使えばいいですか」。ご相談の席でいちばん多い質問です。同じ予算の話でも、費用の仕組みは別の記事で扱いました。ここでは、予算の「額」を何を根拠に決めるのかに絞ります。
DSPの予算はどう決められている?よくある3つの答え方
よくある決め方は、前年比、広告費全体に対する固定割合、先方の言い値の3つで、どれも追加で生まれた売上を見ていません。
前年が良ければ同水準、悪ければ削る。広告費の何割をDSPに回すと決めておく。出せる範囲で決める。気持ちは分かります。
ただ、広告管理画面のROASには、DSPがなくても買っていた人の購入まで含まれます。見ているのは「DSP経由の売上」であって、「DSPのおかげで増えた売上」ではありません。予算の根拠にするには、ここが弱いのです。
観測データで最適額を計算すると何が起きる?
観測データを素朴に最適化にかけると、効果が桁違いに膨らんで出ます。そのまま提案すると外します。
Amazon Marketing Cloudで実データを引けば最適額が出る、と考えたくなります。半分は正しく、半分は落とし穴です。
とある会社のフル1か月分のデータで、素朴に推定したところ、DSPのiROASは65倍、理論上の最適投資額は現状の何十倍という結果になりました。対照群を丁寧にマッチングしても47倍です。

※イメージ図(とある会社の実測をもとに作成)
この図では、赤い2本と右端の青い1本の高さの差を見てください。
理由は選択バイアスです。広告をたくさん見た人ほどよく買っているのは、広告が効いたからとは限りません。もともと買う気が強い人に広告が当たりやすかっただけかもしれない。私たちはこの数字を一度出したうえで、採用しませんでした。観測データは、放っておくとDSPの効果を大きく見せます。
DSPは赤字?最も渋い見方でも黒字と言えるか
一番厳しい見方をしても費用を回収できていれば、「最低でも黒字」は固い結論として言えます。
やり方は単純です。検索広告に一度も触れていないお客様、つまりDSPだけが連れてきた層を取り出し、その売上だけをDSP費用の全額にぶつけます。
| 見方 | iROAS |
|---|---|
| DSPだけが生んだ売上 ÷ DSP費用(保守的な床) | 2.9 |
| 損益分岐(1 ÷ 粗利率) | 1.9 |
2.9は1.9を上回ります。しかもこの数字は、DSPと検索広告が重なって稼いだ売上を丸ごと無視しています。実際の効率はもっと高いはずです。

※イメージ図(とある会社の実測をもとに作成)
見るのは左の灰色と右の青の差で、青が灰色を超えていれば赤字ではありません。
DSPの予算は過小か過剰か?方向だけは言える
黒字で、かつ広告費全体に占める比率が低いなら、増やす方向だと自信を持って言えます。
同じ会社では、DSP費が広告費全体の4.2%でした。黒字なのにこの比率は、明らかに小さすぎます。
ここまでが、観測データだけで固く言える範囲です。額は言えません。方向だけです。
最適な予算額はなぜ観測だけで決まらない?
最適額は点ではなく幅でしか出ず、その幅のどこが正解かは観測データの外にあります。
投資を増やすと増分売上は伸びますが、効率は落ちていきます。止めどころは、次の1円が粗利で回収できなくなる点で、限界iROASが「1 ÷ 粗利率」を切ったところです。粗利が30%なら3.3倍、50%なら2.0倍が目安になります。
問題は、投資と増分売上の曲線の高さです。観測した売上のうち、本当にDSPの手柄は何割なのか。この割合が、さきほどの選択バイアスのせいで観測からは測れません。
保守的に見れば「現状に少し足す」、重なりの効果を一部認めれば「現状の数倍」。幅が広いのはそのためです。
ホールドアウトとは?DSPの予算額を確定させる方法
ホールドアウトは、一部の対象者にわざと広告を出さずに比較する実験で、これを1本回すと予算額を1円単位で絞り込めます。
広告を出した群と出さなかった群の差を見れば、DSPが本当に生んだ増分が実測できます。そこから曲線を引き直せば、限界の点が決まります。
現場でよく見るのは、ホールドアウトなしで「最適額は月いくらです」と言い切る提案です。たいていは選択バイアスを踏んでいます。「だいたい」と「確定」を分けるのは、この実験を回したかどうかです。
DSP予算の上限は何で決まる?3つの天井の考え方
最適額は、限界利益、TACoS、キャッシュの3つの天井のうち、いちばん低いところで止まります。
どの天井で止まったかによって、次の打ち手が変わります。
| 止まった天井 | 次の打ち手 |
|---|---|
| 限界利益 | DSPを増やすより、粗利の改善やオーディエンスの拡張 |
| TACoS | 経営判断でKPIの目標を見直せば伸ばせる |
| キャッシュ | 資金を用意できれば、リターンを確実に取れる |
限界利益で止まったのに予算だけ積んでも、赤字が増えるだけです。
まとめ
DSPの予算は、勘で決めるものではなく、データで言い過ぎるものでもありません。順番は次の3段です。
- 最も渋い見方で、費用を回収できているかを確かめる
- 広告費に占める比率と効率から、過小か過剰かの方向を出す
- 精密な額は、ホールドアウトで確定する
「ここまでは言える、ここからは測る」。この線引きができるかどうかが、予算を外さない分かれ目です。
数字はいずれも事例の計算例で、金額や率は時期や商品で変わります。判断の前に、最新の公式情報と自社の粗利で確認してください。
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